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2011.03.24  天声人語


エミリー・ディキンソンという米国の女性詩人を知る人は少ないかも知れない。19世紀にボストンに近い町で静謐(せいひつ)な生涯を送った人で、自然の中で書いた数々の短詩を遺(のこ)した▼次のような無題の詩がある。〈失意の胸へは/だれも踏み入ってはならない/自身が悩み苦しんだという/よほどの特権を持たずしては――〉(中島完(たもつ)訳)。これが全文で、新聞記者という仕事柄、胸に深く畳んできた。そして今、未曽有の失意と悲痛に満ちる被災地から、小紙の、あるいは他社の報道が続く▼だれもが苦渋の取材だろう。先の小紙で、阪神大震災を体験した精神科医の中井久夫さんが、被災者には「『わかってたまるか』という気持ちもある」と言っていた。伝える使命と、悲痛な胸に踏み入る躊躇(ちゅうちょ)。きびしい葛藤をくぐって来た文であり、写真、映像である▼泣きながら書いた者も、泣きながら撮った者もいよう。NHKのアナウンサーも声を詰まらせては、必死に立ち直ってニュースを読み続ける。そうした報道の数々が、支え合う決意に寄与していると信じたい▼地震から1週間が過ぎ、犠牲者は阪神を超えた。安否不明者は1万9千を数える。被害の全貌(ぜんぼう)はなお分からない。いまだ救援の届かぬ集落を昨日の朝刊が伝えていた。がれきの下から食料を拾って空腹をしのいでいるという▼「誰かがいてくれる」こと、「忘れられない」ことが被災者を励ますと中井さんは言う。まだ先は見えないが、失意の胸に長く寄り添う報道でありたい。メディアもまた試されているのだと思う。

2011年3月19日(土)付 社説

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